中学生・高校生が聞く!やってみると爽快。
【里山へGO!】に参加したら、東京の自然環境を守りたくなった
東京の多摩地域には「保全地域」という豊かな自然が残されています。東京都では、都民がその自然に触れ、守る体験ができる「里山へGO!」というプログラムを実施しています。今回は東久留米市の野火止用水歴史環境保全地域で開催されたプログラムに参加。里山を守り、育てる保全活動を体験してきました。
今回の取材メンバー
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オイヤン Oiyan -
こうしん Koshin
お話を聞いたのは…?
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宮谷 優也さん Mr. Miyagai
(公財)東京都環境公社
東京都生物多様性推進センター -
冨樫 由希子さん Ms. Togashi
(公財)東京都環境公社
東京都生物多様性推進センター長
訪れたのは…?
里山へGO!(野火止用水歴史環境保全地域)
1655年に開削された野火止用水とそれに隣接する雑木林からなる里山。1974年に東京都の条例で歴史環境保全地域に指定された。東京都の事業により清流が復活した歴史を持ち、現在は里山保全活動により、良好な自然環境が保たれている。「玉川・野火止コース」などで都民の散歩道としても利用されている。
東久留米の里山で保全活動にトライ!
里山を訪れて生物の多様性を知る
この日の「里山へGO!」は、こどもから大人まで18人が参加。親子での参加が多く、たくさんの参加者が集まる人気の高いプログラムでした。当日はこの保全地域で日頃から保全活動を行っている「東久留米自然ふれあいボランティア」の皆さんに指導をうけながら、朝から里山の保全活動がスタートしました。取材メンバーも参加者と一緒に開会式に参加し、準備運動をしてから自然観察に出発です!
野火止用水歴史環境保全地域は、江戸時代初期に作られた用水路と雑木林からなる里山です。11月の秋晴れのなか、里山に入っていくと、さまざまな草花が見られました。
手入れされていない森の場合、木が密集しすぎて暗くなり、多様な草花が育ちにくくなります。しかし、この場所では、人の手を入れることで森が若返り、木々の間から光が差し込んで、良好な自然環境に整えられていました。
歩いてみて、植物が成長できる環境に整えられているのが良くわかりました!
下草刈りの保全活動に挑戦!
保全活動の1つめは、「下草刈り」。若い木の周りに生い茂った草を刈り取り、森を健全に保つための作業です。取材メンバーは保全地域活動団体の皆さんの指導を受け、地面に対して平行に刈込バサミを当てるコツなどを教わりました。もくもくと作業を続けると、たくさんの下草が刈れて、若木のまわりがすっきりときれいになりました。
刈った後はきれいになるので達成感がありました!
萌芽更新をやってみる
萌芽更新(ほうがこうしん)とは…?
樹齢を重ねた木を伐採し、森を若返らせる方法を指します。木は切り株を残して伐採することで、新しい芽(萌芽)を伸ばします。数本伸びる萌芽の中から成長が見込めそうな2〜3本を選んで、残りを刈り取ることを「もやわけ」といいます。残した芽が成長すると若木となっていきます。
枝を切るのは爽快。保全地域活動団体からコツを教わってうまくできました!
東京の里山保全活動をすすめる職員にインタビュー
里山とは何ですか?東京にはどれくらいありますか?
人の手が入ることで整えられた自然のこと。
東京都にもたくさんあります。
宮谷さん: Mr. Miyagai: 手付かずの自然ではなく、人の暮らしとつながった場所について愛着を込めて「里山」と呼んでいます。たとえば人は昔から山の木を切って薪にして、ストーブやかまどの燃料としてきました。暮らしに利用する代わりに手を入れて山を管理してきたわけです。畑や田んぼがあるのも里山です。しっかり管理することで、多様な生き物が暮らしやすい環境が生まれます。
里山をはじめとした自然環境が豊かな場所は東京都にもたくさんあります。東京都でもこのような自然をまもるため、5種類51の保全地域(令和8年2月現在)を指定しています。今いる野火止用水は最初に指定された保全地域です。
保全地域の5つの種類
- 自然環境保全地域:国の自然環境保全地域に準ずる、自然を保護することが必要なエリア
- 森林環境保全地域:水源を涵養し、多様な動植物が生息する植林された森があるエリア
- 里山保全地域:雑木林や農地、湧水とともに多様な動植物が生息するエリア
- 歴史環境保全地域:歴史的な遺産と良好な自然の保護が必要なエリア
- 緑地保全地域:樹林地や水辺がある市街地近郊のエリア
東京にいながら自然に囲まれた場所がたくさんあるんですね!
「里山へGO!」のプログラム内容と目的を教えてください!
里山の手入れをしてみることで、自然を大切にする気持ちを育みます。
宮谷さん: Mr. Miyagai: それぞれの保全地域の特徴や季節に合わせて里山の手入れを行っています。今日のように下草刈りや萌芽更新を行うこともあれば、落ち葉かきなどの活動も行うこともあります。田んぼのある保全地域では田植えや稲刈りを実施しており、毎回人気のプログラムです。そのほか自然観察やクラフト体験のプログラムもあります。
里山は手入れをすることが大切で、たとえば萌芽更新をすることで、鬱蒼(うっそう)としていた森の林床に日が差して快適な環境になります。実際に保全活動を体験していただくと、なぜ必要なのかがわかります。それによって自然を大切にする気持ちや価値観を持っていただくのがねらいです。
萌芽更新が里山にもたらすメリット
- 大きな木を伐採することで、林床に日が差す
- いろいろな植物や昆虫が生息・生育するようになる
- 切り株を残して若木の成長を促すため早期に里山が若返る
- 巨木や老木の台風などでの倒木による被害を防ぐ
森に人の手が入ることでいろんな植物が成長できる環境になるんですね!
保全地域とは?
- 良好な自然地を将来にわたり保全することが目的
- 都が条例に基づき指定し、開発等の行為を制限
里山の保全地域活動団体ってどんな人たちですか?
保全地域でボランティアをされている方たちです。
宮谷さん: Mr. Miyagai: 今日の活動も地元の東久留米自然ふれあいボランティアの皆さんにご協力いただきました。こうした方たちが保全地域活動団体の人たちで、基本的には地域でボランティアをされている方で構成されています。里山の維持管理については、地元の自治体と東京都環境公社、保全地域活動団体の3者が連携し保全活動を進めています。現在、30以上の団体が活動しており、保全地域にはそれぞれ保全計画があるので、それに則(のっと)って、下草刈りや外来種の駆除などの活動を進めています。
ボランティアの方が
もっと増えてくれたらいいですね!
多摩地区はとても自然が豊かだと聞きます。それがわかるエピソードはありますか?
復活した田んぼやホタルが出る場所もあります。
宮谷さん: Mr. Miyagai: 多摩地域の保全地域では、キンランやギンランといった希少種などの植物が生育しています。実は田んぼもたくさんあって、横沢入里山保全地域のように都の保全事業によって田んぼが復活した場所もあります。さらに八王子館町緑地保全地域には沢の源流のおかげで豊かな湿地環境があるため夏にはホタルがたくさん舞っています。多摩地域には、東京にいながらにしてホタルが見られるような場所もあるんです。
復活した田んぼを見てみたいです!
東京都ではこのプログラム以外にどんな保全活動をしていますか?
学生や企業向けにもプログラムを行っています。
宮谷さん: Mr. Miyagai: 学生の方を対象に「東京グリーン・キャンパス・プログラム」、また企業や団体の方を対象に「東京グリーンシップ・アクション」という緑地保全活動のプログラムを提供しています。「東京グリーンシップ・アクション」では、企業の社員やご家族が 枯木の伐採や希少種の保護、外来種の対策などの活動を行います。この場合は企業や団体の方には費用を一部負担いただいて保全活動をサポートしてもらっています。
東京都の自然環境を守るためには、どんな課題がありますか?
外来種の侵入と、保全活動の人手不足・高齢化が課題です。
宮谷さん: Mr. Miyagai: 大きく2つあります。1つめは外来種の侵入によって生態系に異変が起きていることです。アライグマなどの動物が入ってくることによって日本の在来種の存在がおびやかされつつあります。本来ある生態系がこわされるため、それを守らなければなりません。
2つめは保全活動をする人の圧倒的な人手不足です。保全地域活動団体の話をしましたが、51の保全地域を約30の団体が守っており、複数の地域をかけもちしていただいている団体もいる状況です。人手が不足すると手入れするスペースが減って、それだけ荒れていきます。また活動される方の高齢化も課題です。皆さんのような若い都民の方にご協力いただけるととても助かります。
外来種は東京の自然環境にも
関係しているんですね。
東京都の中高生にメッセージをお願いします!
自然にふれて、その大切さを知ってほしいです。
宮谷さん: Mr. Miyagai: 学生のうちから自然にたくさんふれて興味を持ってほしいと思います。それをきっかけに自然環境を守ることの大切さや価値観を学んでいただきたいですね。私たちは自然があるおかげで日々生活ができています。その感謝の気持ちを育んで、保全活動の一助になっていただけるとうれしいです。
中高生の力が必要。調べ学習にもおすすめ!
まずは一度、保全活動に参加して、自然を守る一員になってほしいです。
今日はお二人に保全活動をしていただきました。実際に活動すると環境に貢献できるうれしさがあったと思います。こうしんさんからは「自分たちが守った場所がなくなるのはさみしい」という声がありました。やはりそうして一人でも多くの方に実際に来ていただきたいのが私たちの思いです。一人が100回作業することもよいのですが、100人が1回でも保全活動に参加していただくことで横への広がりも期待できます。ぜひ保全活動に参加して自然を守る側の一員になってください。
また、保全活動に参加したいです!
クイズに挑戦 !!
クイズで楽しく振り返ろう!
Q.東京都には令和8年2月現在、いくつの保全地域がありますか?
*答えは記事の最後に掲載。記事の中にも答えがあるよ!
里山での取材を終えて
こうしん Koshin
身近なところに
オイヤン Oiyan
やってみると
里山での保全活動に参加した取材メンバーは、その活動の意外なおもしろさに目覚めたという意見が。
「最初はちょっと地味かもと思っていましたが、おもしろかった。ぜひ一度はやってほしいです。YouTubeなどのSNSでの拡散やイベントを増やして、里山について知る機会が多くなればいいと思いました」(オイヤン)、
「自然環境を守ることはおおげさなことではなく、イベントなど身近なところにきっかけがあります。一人ひとりの意識と行動の積み重ねがとても大切。自分には何ができるのか、との問いを持ち直してほしいです」(こうしん)という感想が聞かれ、東京の自然の豊かさとそれを守りたい思いが芽生えた体験となりました。
- クイズの答え:
- C. 51
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